キャンプ場で風が出てきたとき、知りたいのは「何メートルになったら畳むのか」という一点だ。ところが今回あたったメーカー3社の資料(取扱説明書2本と、設営の手引き1本)に、「風速◯m/sまで使える」という数字は書かれていなかった。
代わりに書かれていたのは、目の前の幕の形で決めるやり方だ。ogawa(キャンパルジャパン)アポロンの取扱説明書は、張り綱を目いっぱい張っても、なお幕が大きく歪む——そういう強風のときは速やかに撤収するように書いている。風速計の数字ではなく、いま張ってある幕がどうなっているかで決めろ、ということだ。
この記事では、メーカー3社の資料と気象庁「風の強さと吹き方」(PDF)を並べて、①いつ畳むか ②畳む前にやっておくこと ③予報の数字をどう受け取るか、を分けて書く。🔴 それと、悪天候のとき、テントの中は安全な場所ではない。そこは最後に取扱説明書の言葉で書く。
目次
先に断る──「風速◯mまで」という数字は、今回あたった範囲では見つからなかった
今回読んだのは、次の3本だ。
- ogawa(キャンパルジャパン)アポロン 取扱説明書(PDF) ── ティピー型の大型テント
- DOD ワンタッチテント T2-629 取扱説明書(PDF) ── 骨を広げて立てるワンタッチ型
- キャプテンスタッグ「覚えておきたいドーム型テントの張り方・使い方」 ── ドーム型の設営の手引き
この3本の中に、使ってよい風速の上限を数字で示したものは無かった。🔴 これは「テントに耐風性の数字が存在しない」という意味ではない。今回あたった3本に書かれていなかった、というだけだ。自分の持っているテントの取扱説明書に風についての記述があるなら、この記事よりそちらが優先する。
数字の代わりに3本が書いていたのは、もっと手前の前提だった。固定してあっても壊れるときは壊れる、という話だ。
取扱説明書が撤収の合図として書いていること
張り綱を張ってもなお幕が大きく歪むなら、速やかに撤収
ogawaのアポロンの取扱説明書は、マジックテープも張り綱も必ず使うこと、と書いたうえで、こう続けている。張り綱をしっかり張った状態でも幕が大きく歪むほどの強風なら、速やかに撤収する。
ここが目盛りになる。見るのは風速計ではなく、張り綱を正しく張ったうえで、幕が形を保てているかどうかだ。同じ風でも、幕の形・張り方・立っている場所によって受ける力は変わる。だから現物で見る、という形になっているのだと俺は読んだ。🔵 ただし、その理由まで取扱説明書に書いてあるわけではない。書かれているのは「大きく歪むほどの強風なら速やかに撤収」までだ。
「固定していても飛ばされることがある」は、2社とも書いている
ogawaの取扱説明書には、悪天候が見込まれる状況でキャンプを強行するのは非常に危険だ、とある。そのうえで台風のような風が吹いているときは、どれだけしっかり固定してあっても、つぶれることも、吹き飛ばされることもあるとしている。
DODのワンタッチテントの取扱説明書も、警告の欄で同じ向きのことを書いている。強風のときは、テントやタープをしっかり固定してあっても、つぶされることがあるし、吹き飛ばされることもある、という書き方だ。
つまり「ちゃんと張ってあるから大丈夫」は、この2社の取扱説明書のどちらにも支えられていない。ペグと張り綱は飛ばされにくくするものであって、飛ばされない保証ではない。
壊れるのは、張っているあいだより設営中と撤収中
ogawaの取扱説明書には、判断の順番を変えるかもしれない一文がある。テントの強度は、設営が最後まで終わった状態を前提に設計されているというものだ。そして壊れるのは、張っている最中と畳んでいる最中が多いと続く。だから、風が強いあいだは設営も撤収も見合わせて、収まってから手を動かすように、と書かれている。
DODの取扱説明書も同じ向きだ。強風・大雨・落雷といった危険な状況で、組み立てや設営をしないこと。そして風があるなら、風がやんだ時を見計らって立てることを求めている。
ここで困るのが、「風が強いから畳もう」と「風が強いときに畳むな」が、同じ資料の中に並んでいることだ。そして、その食い違いに手当てをしているのも、同じ取扱説明書だった。
飛ばさないための順番(アポロンの取扱説明書に書かれているもの)
- ペグは全数きちんと打つ。補強用の張り綱も、全数きちんと張る
- ペグで留める前と、ペグを抜いたあと。この2つの時間に、急な突風で持っていかれることがある。幕から手を放さない
- 打つ前に、補強用の張り綱を先に仮止めしておく手もある、と添えられている
- 畳むときは、補強用の張り綱をいちばん最後に抜けばいい
- 抜いたペグは全数そろっているか数える
並べてみると、どれも「幕が風にさらされていて、かつ地面に留まっていない時間」を短くするための手当てだと分かる。設営でも撤収でも、いちばん危ないのはペグが刺さっていない状態の幕のほうで、張り終わった幕ではない。
🔴 ただし上の5つはアポロンの取扱説明書に書かれていることであって、すべてのテントの手順ではない。自分のテントの取扱説明書に別の順番が書かれているなら、そちらに従ってほしい。
たるませない──たるんだ幕は「風の力を余計に受ける」
ogawaの取扱説明書は、付いてきたペグと張り綱を残さず全部 使い、幕をたるませないように組み立てるよう書いている。理由も添えられていて、生地がたるんでいると、雨の日は天井などに溜まった水が幕をつぶす方に働き、風の日は余計な力を受ける。取扱説明書はこれを、飛ばされる原因になりうると書いている。
手当てとして挙げられているのは2つ。ペグは根本まで地面に沈めること、そして張り綱は強い張力を保つことだ。
DODの取扱説明書も、ロープはすべてペグで留めること、ペグとロープで全箇所を確実に地面へ固定することを求めている。そのうえでテントやタープには、構造のせいで風や雨の抵抗を受けやすいものがあると書いている。ペグの打ち方についても図が載っていて、そこには「地面」「ロープ」という文字と、約45度・約90度という2つの角度が書き込まれている。🔵 どちらの角度がどこを指すかは、文字だけでは決められない。角度を合わせるときは取扱説明書の図そのものを見てほしい。
キャプテンスタッグのページが挙げているのは、地面の側の話だ。硬い地面なのか砂地なのか、地面の状態に合ったペグを使うこと。ペグとロープの予備は常に用意しておくこと。そしてペグ、ガイドロープ、幕の張り具合は、いつも点検すること。張ったら終わりにしない、ということだ。場所の選び方についても、風当たりの弱いところで、地面が平らで水はけのよい所。そこを選んだうえで、小石などは先に取り除くように書かれている。
ペグそのものが抜けなくなる・回収しそびれるといった現場の話はペグが抜けない時の抜き方に、張る場所の見つけ方はキャンプ場でテントを張る場所の選び方にまとめてある。
気象庁の「風の強さと吹き方」をどう読むか
ここまでが現物の話で、ここからは予報の話だ。気象庁の「風の強さと吹き方」は、平均風速の区分ごとに、そのとき外で何が起きるかを並べた表になっている。以下の数字は、表の「平均風速」の区分をそのまま書いた。表の単位はm/s(毎秒何メートル)だ。
- 10以上15未満(やや強い風):向かい風では歩きにくい。傘がさせない。木は全体が揺れはじめ、電線も揺れる。時速に直すと〜50km
- 15以上20未満(強い風):向かい風では歩けず、転ぶ人も出る。高い場所での作業はきわめて危ない。電線が鳴りだし、看板やトタン板が外れはじめる。〜70km
- 20以上25未満(非常に強い風):何かにつかまらないと立っていられなくなる。飛んできた物で怪我をするおそれがある。細い木は幹が折れ、根の張っていない木は倒れはじめる。〜90km
- 25以上30未満:屋外で動くこと自体が極めて危険。走っているトラックが横転する。〜110km
キャンプで先に効いてくるのは、いちばん上の段だと思う。傘がさせない。木が全体で揺れている。これなら風速計が無くても分かるし、区分の名前を覚えていなくても目で見える。
言葉の意味のほうは、気象庁の「風について」のページに説明がある。風の強さは「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」の4段階に分類されていて、たとえば「非常に強い風」が指す範囲は、下が20m/s以上、上が30m/s未満だ。暴風警報の基準のほうは都道府県ごとに決められていて、東京地方で「暴風」と言えば25m/s以上の風を指すとしている。基準が地域によって違うことは、風の強さと吹き方の表の注記にも書かれている。
予報の数字を、そのまま現地の風だと思わない
表には注記が付いている。キャンプで使うなら、ここが本体だと思って読んだほうがいい。
- 平均風速というのは10分間を平均した値で、瞬間風速のほうは3秒間の平均だ。風は絶えず強弱が変わるので、瞬間風速が平均風速の1.5倍ほどになることは多く、大気が不安定なときなどは3倍以上に達することもある
- 風速は地形や周りの建物に左右される。だから自分がいる場所の風速は、近くの観測所の値とは大きく違っていることがある
- 同じ風速でも、建物や構造物がどんな状態か、風がどう吹くかによって、被害の出方は変わる。表に載っているのは、ある風速が観測されたときに普通に起きる現象や被害で、それより大きな被害が出ることもあれば、逆に小さな被害で済むこともある
2つめが、キャンプ場でいちばん効く。予報に出ている風速は、自分がテントを張っている場所の風速ではない。林の中か、河原か、開けた高原か。同じ町の予報でも、立っている場所で受ける風は違う。
だから順番はこうなる。予報の数字は「今日は張るのをやめる」「明るいうちに畳む」といった前もっての判断に使う。現地で畳むかどうかは、張り綱を張った状態で幕が大きく歪んでいないかで見る。数字と現物は、役割が違う。
悪天候のとき、テントの中は避難先ではない
最後がいちばん大事なところなので、取扱説明書の言葉で書く。ogawaの取扱説明書は、悪天候のとき、テントの中は安全な場所ではないと明記している。そして台風のときも落雷のときも、キャンプ場の管理者の指示に従って、安全な場所へ移るように書いている。テントに落雷する可能性もあり危険だ、とも書かれている。
雷についてはキャンプの雷対策で、気象庁の資料をもとに避難先を整理してある。気象庁が挙げている安全な空間にテントは入っていない、という話だ。強風と雷はしばしば同じ日に来るので、合わせて読んでほしい。
それと、ogawaの取扱説明書は、吹き飛ばされた幕が当たる先は、人であり、車であり、隣のテントだという向きのことも書いている。大きな損害になりうる、と。飛んだ幕が当たる先は、自分の道具とは限らない。
風が来る前にできることも、ひとつ書かれている。寝るとき、風が強いとき、雨のときは、ファスナーの開口部を閉じておくこと。夜のうちに天気が急に変わることがあり、風で飛ばされる、張り出しに雨水が溜まってつぶれる——この2つが危険として挙げてある。
それでもポールが折れた、幕が裂けた、という場合はテントのポールが折れた時の応急処置とタープが破れた時の補修方法にそれぞれ手順をまとめてある。
まとめ
- 今回あたったメーカー3社の資料(取扱説明書2本と設営の手引き1本)に、「風速◯m/sまで使える」という数字は書かれていなかった。ogawaアポロンの取扱説明書が撤収の合図として挙げているのは、張り綱をしっかり張っても幕が大きく歪むほどの強風という状態のほうだ
- しっかり固定してあっても、つぶれることも吹き飛ばされることもある──ogawaとDOD、2社の取扱説明書がどちらも書いている。ペグと張り綱は飛ばされにくくするもので、飛ばされない保証ではない
- ogawaの取扱説明書は、テントの強度は設営が最後まで終わった状態を前提に設計されていて、壊れるのは張っている最中と畳んでいる最中が多いとしている。風が強いあいだは設営も撤収も見合わせ、収まってから手を動かす
- ペグは全数、補強用の張り綱も全数。ペグで留める前とペグを抜いたあとは、急な突風で持っていかれることがあるので、幕から手を放さない。畳むときは、補強用の張り綱をいちばん最後に抜く(いずれもアポロンの取扱説明書に書かれていること)
- たるませない。生地がたるんでいると風の力を余計に受け、飛ばされる原因になりうる。ペグは根本まで地面に沈め、張り綱は強い張力を保つ
- 気象庁の表で、平均風速10以上15未満(単位はm/s)は「傘がさせない」「木が全体で揺れる」。ただし自分がいる場所の風速は近くの観測所の値と大きく違っていることがあり、瞬間風速は平均風速の1.5倍ほどになることが多く、大気が不安定なときなどは3倍以上に達することもある
- 🔴 悪天候のとき、テントの中は安全な場所ではない。台風のときも落雷のときも、キャンプ場の管理者の指示に従って安全な場所へ移る
参考にした情報源
- 気象庁「風の強さと吹き方」(PDF)
- 気象庁「風について」(よくお寄せいただくご質問)
- キャンパルジャパン株式会社 ogawa「アポロン」取扱説明書(PDF)
- ディーオーディー株式会社 ワンタッチテント T2-629 取扱説明書(PDF)
- キャプテンスタッグ「覚えておきたいドーム型テントの張り方・使い方」


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