キャンプでカセットこんろに大きめの鉄板を載せる。あるいは、人数が多いからと2台 横に並べる。この2つは、ボンベが破裂した事故の原因として、公的資料に実例が載っている使い方だ。
NITE(製品評価技術基盤機構)の資料(PDF)には、2017年4月に屋外でこんろを使っている最中にボンベが破裂し、6名がやけどを負った事故が載っている。原因として推定されているのは、こんろを2台 並べ、片方はごとくを裏返してセットし、その両方に比較的大きな鉄板を載せて調理していたことだ。
この記事では、何が「覆う」に当たるのか、キャンプでとくにやりがちな使い方はどれかを、NITE・東京消防庁・日本ガス石油機器工業会の資料から拾って整理する。🔴 なお、テント内や車内でこんろを使わないという話は別記事なので、そちらは一酸化炭素中毒対策を見てほしい。
目次
実際に起きている──2台並べて鉄板、でボンベが破裂
先に事例から見る。こういう話は、数字より事例のほうが早い。
NITEの資料が載せているのは、2017年4月に宮崎県で起きた事故だ。屋外でこんろを使っている最中にボンベが破裂し、6名がやけどを負っている。推定されている原因はこうだ。こんろを2台 並べていた。片方はごとくを裏返してセットしてあった。その両方に、比較的大きな鉄板を載せて調理していた。そして裏返した側のボンベが過熱され、内圧が上がって破裂した。
同じ形の事故を、東京消防庁も事例として挙げている。
- 高校の文化祭──こんろを2台 並べ、鉄板をその上に置いて焼きそばを作っていた。調理中にボンベが加熱されて爆発。負傷者は15名で、うち重症が2名、中等症が4名と診断されている
- 大学の学園祭──受け皿(五徳)を裏返しのまま使い、ボンベが加熱されて爆発した。負傷は4名、うち学生が2名、入院の要る中等症だった
どちらも人数が多い場面だ。キャンプでグループ飯を作るときの絵と、あまり変わらない。
何が起きているのか──ボンベの中身は液体で、温まると膨らむ
理屈はNITEの資料に書いてある。カセットボンベの中身は液化石油ガスで、中は液体と気体に分かれている。ボンベが温められると、液体のぶんが気体になろうとして膨らむ。中の圧力が上がり、限界を超えたところで破裂する。
だから危ないのは「火が大きい」ことではなく、ボンベに熱が回ることのほうだ。鉄板でも、2台並べでも、ごとくの裏返しでも、行き着く先は同じになる。
数字を見ておく(ただし、これはキャンプだけの数字ではない)
NITEの資料が集計しているのは2014年度からの10年ぶん(2023年度まで)で、こんろの事故は91件。うち調査が終わった86件を見ると、誤使用や不注意が推定されるものが約4割を占めている。数としては33件で、割合にすると38%だ。
その中でとくに多いのが、ボンベが異常なほど熱くなる誤った使い方だ。過熱されたボンベが破裂し、死亡事故ややけどといった人的被害にまで至っている。
🔴 ここは母集団を書いておく。この91件は家庭も含めたカセットこんろ全体の事故で、キャンプの事故だけを数えたものではない。またこの資料は、こんろに付いていないボンベ単体の事故も、こんろの事故に含めている。数えている範囲は、消費生活用製品安全法にもとづく重大製品事故に、事故情報収集制度で集めた非重大の事故やヒヤリハット(被害なし)を加えたものだ。
「そんな使い方する人いる?」については、同じ資料が別紙で東京都の調査を紹介している。対象は都内在住で20歳以上の男女2,000人、インターネットでの調査(令和6年4月)だ。やってはいけない使い方をした経験がある割合は、2台並べが5.6%で最も高い。次が異なる調理器の上で4.3%、炭起こしが3.2%。年代で分けると、年齢層が低いほどこの経験が多い傾向だったという。
「覆う」の線引き──資料が名指ししている使い方
ここから先の一覧は、日本ガス石油機器工業会(JGKA)が出している安全な使い方のページが挙げているものだ(東京消防庁のページも、この一覧を出典として載せている)。🔵 すべてではなく、キャンプで手が伸びやすいものを拾った。
- こんろ全体を覆ってしまうほど大きな調理器具は使わない。熱の逃げ場がなくなり、ボンベが過熱して爆発することがある
- こんろを2台以上 並べて使わない。理由は同じで、熱がこもりやすくなるため
- 石綿やセラミックの付いた魚焼き器、焼き網、陶板プレートといった蓄熱性のあるものも避ける
- 調理以外の用途、たとえば木炭や練炭の火おこしには使わない
- IHなどの電磁調理器の上で使ったり保管したりしない。電源がうっかり入れば、そこからボンベが過熱する
- こんろごとに指定されたボンベを使う。それ以外のボンベは絶対に使わない
- 家具・壁・カーテンといった燃えるものからは、15cm以上 離して使う
キャンプで効くのは、上から4つめまでだと思う。とくに木炭の火おこしは、焚き火やバーベキューの支度で手が伸びやすい。着火剤が湿った、チャコールスターターが無い、といった場面だ。CB缶とOD缶の違いの記事でも触れているとおり、こんろは調理のための道具として設計されている。
キャンプ特有の落とし穴──風よけで囲まない
屋外ならではの話は、JGKAのアウトドア用ガス器具のページのほうに載っている。屋内向けの一覧には出てこないものが並ぶ。
- 🔴 風よけのためであっても、器具とガスカートリッジを全体で囲い、カートリッジが過熱するような使い方はしない
- こんろで炭火などをおこさない。輻射熱が大きく、カートリッジが過熱する
- 輻射熱の大きい調理器具を載せない。名指しされているのは、大きい鉄板、魚焼き器、セラミック付き製品など
- こんろを2台以上 並べない。カートリッジが過熱して爆発などのおそれがある
- 火気やヒーター、ほかのこんろといった熱源の近くにカートリッジを置かない。空になったカートリッジでも微量のガスが残っている
- 炎天下の砂浜・河原・舗装路面など、非常に高温になる場所にカートリッジを放置しない
- 直射日光の当たる車内に放置しない
- 🔴 テント内では、ランタンやこんろといったガス器具を絶対に使わない。屋外専用であり、屋内・車内・テント内で使えば、一酸化炭素中毒による死亡や、酸欠による窒息死のおそれがある
いちばん上が、この記事でいちばん伝えたいところだ。ウインドスクリーンは、火を守るために立てるものであって、ボンベごと囲うためのものではない。風が強い日ほど囲いたくなるので、順序が逆になりやすい。
換気については、東京消防庁が屋外の場合にも一言 添えている。屋外でも、狭い空間なら換気に気をつけるように、と。タープの下、車の陰、雪壁の内側。囲いを作れば、そこは狭い空間になる。
装着と、ガス漏れの見つけ方
NITEが挙げている「事故を防ぐための3つのポイント」の1つめは、装着だ。
- 無理に押し込まない。向きと位置は、取扱説明書のとおりにする
- ボンベ側の切込み凹部を、こんろ側の受けガイドの凸部に合わせる(JGKA・東京消防庁)
- 取り付けたあとで変な音や臭いがしたら、ガス漏れのおそれがある。直ちにボンベを外して、使うのをやめる
NITEの資料には、装着が不完全だったために接続部からガスが漏れ、点火操作の火花で引火したと推定される事故も載っている(2020年12月・香川県)。建物4棟が全焼し、1名がやけどを負った、と書かれている。
なお「火がつかない」を寒さやガス切れだと思い込んで点火を繰り返すのは、この話と隣り合わせだ。原因の分け方はシングルバーナーに火がつかない原因にまとめてある。
しまい方と、道具の寿命
3つめのポイントが保管だ。使い終わったらボンベはこんろから外す。しまう先は室内の40℃未満の場所。40℃以上になる所や熱源のそばには放置しない。
そしてNITEは、もう一つ釘を刺している。ガスの出が悪いからと温めるのは、絶対にやめること。冬キャンプで火力が落ちたときにいちばんやりたくなる操作が、これだ。寒さで火力が落ちる仕組みそのものはCB缶が冬に火力が落ちる理由に書いた。
道具の寿命についても、NITEと東京消防庁の両方が目安を挙げている。見た目に異常が無くても、こんろは10年、ボンベは7年が買い替えや使い切りを考える目安だ。東京消防庁のページには、製造年月がどこに印字されているか(こんろは側面の定格銘板、ボンベは底面)まで書かれている。
もう一つ、買うときの話。NITEの資料によれば、国内で売られるカートリッジ式のガスこんろには、液石法(液化石油ガスの取引と保安について定めた法律)にもとづく義務がある。国に登録された検査機関の検査を受けたうえで、PSLPGマークを表示することだ。そしてこのマークが無い商品を国内で売るのは違法だ、とも書かれている。買う前にマークの有無を確かめてほしい、というのがNITEの呼びかけになっている。
使い終わったボンベの捨て方はガス缶の捨て方にまとめてある。中身が残ったまま捨てると、ごみ収集車の中で圧縮されたときに漏れたガスへ引火するおそれがある、というのがNITEの説明だ。
まとめ
- NITEの資料には、屋外でこんろを2台 並べ、片方はごとくを裏返し、両方に比較的大きな鉄板を載せて調理していてボンベが破裂し、6名がやけどを負った事故が載っている(2017年4月・宮崎県)
- 東京消防庁の事例では、高校の文化祭で2台並べ+鉄板の焼きそば調理中にボンベが爆発し、負傷者15名(重症2名・中等症4名)に至っている
- 理屈は単純で、ボンベの中は液体と気体に分かれており、温められると液体が気体になろうとして膨らむ。圧力が限界を超えれば破裂する。危ないのは火の大きさではなく、ボンベに熱が回ること
- JGKAが名指ししているのは、こんろ全体を覆う大きな調理器具/2台以上 並べる/蓄熱性のある魚焼き器・焼き網・陶板プレート/木炭や練炭の火おこし。燃えるものからは15cm以上 離す
- 🔴 屋外向けの資料には、風よけで器具とカートリッジをまとめて囲わないという項目がある。風の強い日ほど手が出る操作なので、ここは覚えておきたい
- 装着は無理に押し込まない。取り付けたあとに変な音や臭いがしたらガス漏れのおそれがあるので、直ちにボンベを外して使うのをやめる
- 保管は、こんろから外して室内の40℃未満の場所へ。40℃以上になる所や熱源のそばには置かない。ガスの出が悪いからと温めるのは絶対にやめる
- 🔴 事故件数の91件は家庭を含むカセットこんろ全体の数字で、キャンプだけを数えたものではない。ボンベ単体の事故も含まれている
参考にした情報源
- 製品評価技術基盤機構(NITE)2024年12月26日の注意喚起
- 同 報道発表資料の本文(PDF)
- 東京消防庁 ── こんろの誤使用と誤廃棄についての注意喚起ページ
- 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会(JGKA)── こんろとボンベの安全な使い方
- 同 ── アウトドア用ガス器具のほう


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