カセットガスのストーブやヒーターは、テントの中と車の中では使えません。岩谷産業もユニフレームも、公式サイトではっきり禁止しています。一酸化炭素は味もにおいもなく、気づかないうちに命に関わることがあるからです。この記事では、メーカーが何を禁止しているかと、屋外で使うときに確かめること、テントの中を火を使わずに暖める方法をまとめます。


目次
先に答え:テントの中・車の中では使わない
カセットガスの暖房機を作っている岩谷産業は、暖房機シリーズの紹介ページで、テント内や車内では絶対に使用しないよう書いています(岩谷産業「カセットガス暖房機シリーズ・インテリア」)。
同じ会社のよくある質問では、理由も説明しています。テントのように狭く閉じた場所で燃焼器具を使うと、酸欠や一酸化炭素中毒で死亡する重大事故になるおそれがある、というものです。しかもこれは屋内用・屋外用を問わず使えない、と書かれています(岩谷産業「カセットガス暖房機シリーズ よくあるご質問」)。「屋内用だからテントでも大丈夫」とはならない、ということです。
アウトドア用品のユニフレームも、テント内や車内、屋内では燃焼器具を使わないよう、強い言葉で呼びかけています(ユニフレーム「ガス器具の取扱い」)。業界団体の日本ガス石油機器工業会も、アウトドア用のガス器具は屋外専用で、テント内などで使うと一酸化炭素中毒死や酸欠による窒息死のおそれがある、としています(日本ガス石油機器工業会「アウトドア用ガス器具の安全な使い方」)。
国の機関である製品評価技術基盤機構(NITE)も、テント内や車内では石油ストーブのような暖房器具も、ガスこんろのようなガス器具も使わないよう注意しています(NITE 製品安全情報マガジン Vol.375「一酸化炭素中毒の事故」)。
「換気すれば大丈夫」ではない理由
よく聞くのが「入口を少し開けておけば平気」という考え方です。メーカーの説明は、そうなっていません。
ユニフレームは、自社のガス燃焼器具は屋外用に設計していて、テント内や車内は屋外ではないので「換気」の注意はしていない、と書いています。換気をすればテントで使ってよい、という前提そのものを取っていないわけです。同じページでは、火を燃やすと炎の中で酸素が足りない部分ができ、一酸化炭素が出ること、一酸化炭素は味もにおいも刺激もなく気づきにくいことも説明しています(ユニフレーム「ガス器具の取扱い」)。
日本ガス石油機器工業会も、屋外であっても狭い空間では換気に注意するよう書き添え、ワカサギ釣りのテントについては、入口を開けていても危険だと呼びかけています(日本ガス石油機器工業会)。
NITEは、テントの中でたき火をしたときの一酸化炭素の濃度を測った実験映像を公開しています。換気の足りない場所でたき火や調理をすると濃度が上がり、中毒にいたるおそれがある、という内容です(NITE テント「1. 一酸化炭素中毒に注意」)。
一酸化炭素の性質や、具体的な濃度の話はキャンプの一酸化炭素中毒対策|換気の正しいやり方と、警報器に頼りきってはいけない理由にまとめています。
一酸化炭素警報器は「気づくための道具」
一酸化炭素警報器(COアラーム)は、濃度が上がったときに音と光で知らせる道具です。ただ、持っていれば燃焼器具をテントで使ってよい、という道具ではありません。
アウトドア用の一酸化炭素アラームを出している新コスモス電機は、取扱説明書の冒頭で、この製品は一酸化炭素の発生を未然に防ぐ装置ではないこと、テント内や車内での火気の使用を勧めるものではないことを書いています(新コスモス電機 COALAN CL-725 取扱説明書(PDF))。鳴ったときに求めているのも、まず避難すること、安全を確保してから火を止めて換気することです。
警報器は、鳴らなければ気づけません。寝ている間に鳴っても、起きられる保証はありません。「警報器があるから大丈夫」と考えず、「万一に気づくための保険」として持ってください。同社の製品ページでは、使える場所としてテント内や車中を挙げています(新コスモス電機「アウトドア用一酸化炭素アラーム CL-725」)。
屋外でガスストーブを使うときに確かめること
テントの外、風通しのよい場所で手足を温める使い方なら、ガスストーブの出番はあります。そのときに見ておきたいことを、メーカーと業界団体の説明から拾います。
屋内用と屋外用で、付いている安全装置が違う
岩谷産業のよくある質問によると、屋内用の暖房機には、転倒したときに止める装置、風などで火が消えたときにガスを止める装置、不完全燃焼の前にガスを止める装置の3つを付ける法的な決まりがあります。屋外用にはこれらの一部が付いていないので、屋内用としては使えません(岩谷産業「カセットガス暖房機シリーズ よくあるご質問」)。買う前に、その製品がどちら向けかを取扱説明書で確かめてください。
寒い日はガスが出にくい
同じ質問集は、カセットボンベのブタンガスは10℃を下回ると気化しにくくなり、5℃以下ではほとんど気化しないため使えない、と答えています(岩谷産業「よくあるご質問」)。真冬の夜に屋外で頼るには、そもそも向いていない場面があるということです。ガスの種類と寒さの関係はCB缶が冬に火力が落ちる理由でくわしく書いています。
ガスカートリッジを熱くしない
日本ガス石油機器工業会は、風よけのために器具とカートリッジ全体を囲まないこと、こんろを2台以上並べないこと、空になったカートリッジでも熱源の近くに置かないことを挙げています。どれもカートリッジが熱くなって破裂するおそれがあるからです(日本ガス石油機器工業会)。ストーブの放つ熱がボンベに当たらない置き方かも、取扱説明書で確かめてください。
テントの中を暖めるなら、電気と寝具で
テントの中で夜を越すなら、火ではなく「体の周りの暖かさ」を作るほうが確実です。
- 寝袋とマット … 冬の夜の寒さは、ほとんどが寝ている間の問題です。寝袋は「快適に眠れる温度」の表示を見て選び、地面からの冷えはマットで止めます。選び方は冬のソロキャンプは何度まで?寝袋の「快適温度」とマットのR値だけで決める方法にまとめています。
- 電気毛布 … 電源サイトなら電気が使えます。電源のないサイトでは、ポータブル電源と組み合わせる方法があります。何時間もつかはポータブル電源で電気毛布は何時間使える?で計算しています。
- 湯たんぽ … 寝る前に寝袋を温めるのに向いています。温まったら寝袋から出してから眠ってください(キャンプの湯たんぽ、寝袋に入れっぱなしでいい?)。
電気なら安心、とも言い切れません。東京都は、電気毛布や電気あんかなどでの低温やけどの体験が寄せられているとして、電気毛布は寝る前に温めて寝ている間は高温で使わないよう呼びかけています(東京くらしWEB「電気毛布や電気あんかなどによる低温やけどに注意!」)。
ポータブル電源を探すなら、Jackery(ジャクリ)のポータブル電源の公式サイトで容量と出力を見比べられます。選び方はポータブル電源のキャンプ用選び方完全ガイドにまとめています。
この記事を書き直した理由
この記事は2018年に「冬キャンプに使えるガスストーブの選び方とおすすめ5選」として書いたもので、テントの中で使う前提の書き方をしていました。メーカー各社がテント内での使用を禁止していることを確かめたので、2026年9月に書き直しました。おすすめしていた5商品も外しています。そのうちユニフレームのハンディガスヒーター ワームIIは、同社が2018年をもって生産を終えたと案内しています(ユニフレーム「ガスヒーター生産終了のお知らせ」)。

参考にした情報源
- 岩谷産業「カセットガス暖房機シリーズ・インテリア」
- 岩谷産業「カセットガス暖房機シリーズ よくあるご質問」
- ユニフレーム「ガス器具の取扱い」
- ユニフレーム「ガスヒーター生産終了のお知らせ」
- 日本ガス石油機器工業会「アウトドア用ガス器具の安全な使い方」
- NITE 製品安全情報マガジン Vol.375「一酸化炭素中毒の事故」
- 東京くらしWEB「電気毛布や電気あんかなどによる低温やけどに注意!」
- NITE テント「1. 一酸化炭素中毒に注意」
- 新コスモス電機 COALAN CL-725 取扱説明書(PDF)
- 新コスモス電機「アウトドア用一酸化炭素アラーム CL-725」

