冬キャンプの装備として、対流形の石油ストーブは人気がある。ここで大事なのは、トヨトミが用途の違う文書を3つ出していることだ。ふつうのよくある質問では屋外での使用を認めていない。その一方で、テント内で使う場合に向けた注意書きと、現地で使うチェックリストのチラシを別に公開しており、そこには禁止事項が並んでいる。冬の記事として先に書く。積雪するような状況では、絶対に使わないこと。
目次
結論:文書は3つ。冬なら積雪の項目が効く
- よくある質問のほうは、屋外での使用について「使用できません」と答えている。挙げられている理由は風だ
- 同社は別に「テント内でご使用の場合の取扱注意書」と取扱注意書のチラシを公開しており、条件を満たしたテントでの使用を想定した禁止事項が並んでいる
- 使えるテントの条件は3つ。通気口が付いていること、フロアシートを取り外せること、そして石油ストーブを置くだけの充分なスペースが確保できることだ
- チラシの1項目めは通気口を開けること。そこに、降雪時などは通気口が塞がれないように注意する、という但し書きが付いている。雪の日に効く一行だ
- 雪上では使用しない。積雪するような状況では絶対に使用しない——注意書きの危険(DANGER)区分に入っている。冬キャンプではここがいちばん効く
- テント内での給油は禁止。給油は必ず火の気のない所でおこなう、とされている
- 高地は1300m以上の場所で使用禁止。インナーテント内も、タープ内も、2台以上の併用も禁止(いずれも同注意書き)
メーカーの文書は3つある
ひとつめはトヨトミのよくある質問「屋外で使用できますか?」だ。回答は「屋外では使用できません。」という一文から始まる。挙げられている理由は風で、外では吹き方が読めないことがあり、それが火災・事故・故障のもとになる、という説明になっている。あわせて、ビニールハウスのような温室や地下室——換気が充分におこなえない場所では使わないこと、そして取扱説明書を確認したうえで、人のいる屋内で使うこと、と続く。こちらには「必ず」が付いている。
のこり2つは、同社の「安心してキャンプを楽しむために」というページで配布されている。ひとつがテント内でご使用の場合の取扱注意書(PDF)、もうひとつが取扱注意書のチラシ(PDF)だ。前者は禁止事項を細かく並べたもの、後者は現地で確かめるためのチェックリストになっている。取扱注意書のほうの冒頭には、テント内で使う場合は必ず本書をよく読むこと、製品の取扱説明書もあわせて読むこと、そしてお客様が責任を持って安全に使用することが書かれている。家族や友人にも使用方法と注意事項を説明するように、とも添えられている。
3つは、対象が別だ。よくある質問は製品一般についての問答、あとの2つはテント内で使う場面に限った文書になっている。よくある質問だけを読んで「メーカーはテントについて何も言っていない」と受け取ると、実際に公開されている禁止事項をまるごと見落とすことになる。
冬キャンプでいちばん効く禁止事項
注意書きは、危険(DANGER)と警告(WARNING)の2区分に分かれている。上の危険のほうは、誤った取扱いによって、死亡や重傷、あるいは火災が差し迫って生じると想定される内容——という位置づけで説明されている。
その危険の区分に、雪についての項目がある。
- 雪上では使用しない。すべりやすく安定しないため、製品が転倒して事故や火災が起きるおそれがある
- 積雪するような状況では絶対に使用しない。挙げられている理由は2系統ある。ひとつは、テントに負担がかかって破損し、火災のおそれがあること。もうひとつが通気で、生地が凍りつく、あるいは裾に雪が積もると通気の性能が落ち、酸素が足りなくなって不完全燃焼につながる
冬に使いたい道具について、冬の条件が名指しで禁止されている。「冬キャンプ向け」と紹介される製品でも、雪が積もるような状況は想定の外だと、メーカー自身が書いている、ということになる。
雪については、チラシのほうにもう一行ある。安全チェックリストの1項目めは通気口を開けることなのだが、そこに括弧で但し書きが添えられている。降雪時などは、通気口が塞がれないように注意すること、という内容だ。雪は積もって使用禁止になるだけでなく、その手前で通気口を塞ぎにくる——という読み方になる。
同じ注意書きには高地の項目もある。1300m以上の場所は酸素濃度が薄く、異常燃焼を起こすおそれがあるとして、使用禁止とされている。標高のあるキャンプ場を選ぶときは、ここも確認したい。
使ってよいテントの条件と、禁止されていること
注意書きとチラシは、そもそも使えるテントを限定している。チラシは、使ってよいテントの条件を3つ挙げている。まず置く場所として、石油ストーブを置くだけの充分なスペースが確保できること。つぎにフロアシートを取り外せること。そしてベンチレーター(通気口)が付いていることだ。注意書きのほうも、距離を確保できないせまいテント内では使用しないと書いている。フロアシートは必ず取り外して使う。外さずに使うと、万一テント内で火災が起きたときにフロアシートへ引火し、避難できなくなるおそれがある、とされている。
危険の区分に並んでいる主な禁止・指示は次のとおり。原文には他にも項目があるので、ここでは冬キャンプの場面に関係するものを拾った。
- 換気:使用中の出入口は、必ず1時間に1〜2回(1〜2分)。この頻度で開けて、新鮮な空気を入れる。通気口のほうは2箇所以上 開けておく。裾を石や砂で目張りするのは禁止(換気の性能が極端に落ちるため)
- 可燃物との距離:正面・側方・上方・後方とも100cm以上。こんろは上方150cm以上。距離を確保できないせまいテント内では使用しない
- インナーテント内は絶対に使用しない——酸素不足による不完全燃焼のおそれがあるため
- タープ内では絶対に使用しない。風のあたる場所やテント外も禁止で、理由は風の影響により異常な炎が出て危険だから、とされている
- 2台以上で使用しない。ストーブ・こんろ・ガスバーナー・ランタンなど、他の燃焼機器との併用も不可
- 寝るときと、短時間でもテントを離れるときは必ず消火する。火が消えていることを必ず確認する。人目の届かないところでは使用しない
- 通気口を閉じたままの使用、フロアシートやマットの上での使用、衣類などの乾燥、水平でない場所・不安定な場所での使用も、それぞれ禁止されている
換気の数字と警報器の話、そして各項目の詳しい中身はキャンプの一酸化炭素中毒対策のほうで節を立てて扱っている。この記事は「メーカーの文書が何種類あるか」と「給油まわり」を担当する。
給油は、テントの中でしない
ここがこの記事の本題だ。同じ注意書きの警告(WARNING)区分に、テント内での給油禁止という項目がある。給油は必ず火の気のない所でおこなうこと、テント内で給油しないこと——火災の原因になる、と書かれている。
運搬についての指示もある。車両や台車・キャリーカートで運ぶときは、油タンク内と油受けざら内の灯油を抜くこと。運搬の途中で灯油がこぼれて周囲を汚すおそれがあるため、とされている。行きも帰りも、タンクは空にして動かすという組み立てになっている。
事故の中身を数字で見る
NITE(製品評価技術基盤機構)の2019年の発表に、暖房器具の事故の集計がある。対象は2014年度から2018年度までの5年ぶんで、通知のあった事故は合計965件。うち火災が726件で、75%を占める。時期としては10月に増え始め、1月がピークだという。
製品ごとに見ていくと、石油ストーブ・石油ファンヒーターの数字が際立つ。337件のうち321件——95%が火災になっている。他の製品より、火災になる割合が高いと指摘されている。さらにそのうち119件、35%が全焼だ。死亡事故は50件で、57人が亡くなっている。
ここで母集団をはっきりさせておく。これらは家庭で使われている暖房器具の事故を数えたもので、キャンプでの事故を数えた統計ではない。数字をキャンプの話にそのまま置き換えることはできない。それでも「何が起きて火事になるのか」という型は、場所が変わっても参考になる。
給油のときに、何が起きているか
NITEが挙げている防止のポイントは4つ。順番を変えずに、言葉だけこちらで整理すると こうなる。
- 給油の前には、必ず消火する。給油を終えたら給油口キャップをしっかりと締め、灯油が漏れていないことを確かめてから本体に戻す
- 灯油はポリタンクなどの専用容器へ。ガソリンとは別の場所にしまい、ラベルで見分けが付くようにするなど、誤給油を防ぐ対策を徹底する
- 周囲に燃えるものを置かない。とくに衣類などを乾かさない
- 寝る前には必ず消火し、完全に消えたことを確かめる
この「給油する前に必ず消火する」の先に、もうひとつ見落としやすい段がある。NITEの再現映像の解説が扱っているのは、こういう場面だ。タンクのふたを閉め忘れ、ストーブに灯油をこぼしてしまう。その灯油に、ストーブに残っていた熱が火を着ける。映像はこの現象を再現したものだという。解説には、タンクへ給油したあとは必ずふたが閉まっていることを確認するように、とも添えられている。
実際の火災事例
経済産業省・消費者庁・NITEが2023年に出した「シーズン初めの石油ストーブ安全大作戦」には、事故事例が載っている。そのうちの1件がこうだ。
給油口蓋の閉め方が足りていなかった。そのため、給油を終えたカートリッジタンクを本体に戻すときに蓋が外れ、灯油がこぼれる。こぼれた灯油は天板を伝って燃焼筒にかかり、発火して周囲に広がった。建物1棟が全焼し、2棟が類焼している。
件数も出ている。2018年度から2022年度までの5年ぶんで、石油ストーブ等の事故は269件。このうち調査が終わった233件を原因で分けると、誤使用・不注意が115件(49%)で最も多い。時期としては11月頃から事故が多く発生する、とされている。
使い始めの5つのチェックポイント
同じ資料が挙げている、使用前のチェックポイントは5つだ。
- ほこり。たまっていたら取り除く
- 対震自動消火装置。正しく作動することを確認する。石油ストーブなら、燃焼筒がきちんと取り付けられているかも見る
- 燃料。新しい灯油を使う。昨シーズンの灯油は使わない。そのうえで、ガソリンを誤って入れないための対策を徹底する
- カートリッジタンクの給油口蓋。確実に閉まっているか、漏れがないかを確認する
- 距離。機器と、周りの壁や燃えるものとのあいだに十分な距離が取れているかを確認する
3つめの「昨シーズンの灯油は使わない」については、ホワイトガソリンと灯油、保管ルールはここが違うで保管と処分の話を扱っている。物置に半分残ったポリタンクがある人は、そちらを先に読んでほしい。
現地では、メーカーのチェックリストを使う
ここは自分で組み立てないほうがいい。取扱注意書のチラシには、現地で確かめるための安全チェックリストが5項目 載っている。中身を落とさないように並べ替えると、こうなる。
- 置く場所:水平で、安定した場所を選ぶ
- フロアシート:外しておく
- 距離:テントからも、燃えるものからも離す
- ガス缶など:ストーブのそばには置かない
- 通気口:開けておく。雪が降るときなどは、通気口が塞がっていないかに注意する
この5つに続けて、チラシは「必ずチェックしましょう!」として注記も並べている。こちらも順に見ていく。高地は1300m以上の場所で使用しない。風のあたる場所も使用しない——通気口や出入口付近などが、それに当たる。ストーブの上には、物を置くのも吊るすのも駄目だ。テント内で使う燃焼機器は1台だけ(ストーブ・こんろ・バーナー・ランタンなどを含む)。寝るとき、そして短時間でもテントを離れるときは、必ず消火する。そして燃えているあいだは時々 炎を見て、正常に燃えているかを確かめる——これが最後の項目になっている。
給油については、この記事で見てきたとおり。テント内での給油は注意書きで禁止されており、給油は必ず火の気のない所でおこなう。給油の前に必ず消火することはNITEも経済産業省も書いている。そして給油を終えたら、蓋が確実に閉まっているか・漏れがないかを確かめてから本体に戻す。運ぶときは油タンクと油受けざらの灯油を抜く。
ひとつ補足しておく。こぼれた灯油がストーブの余熱で発火した、という再現映像がNITEにある。ただし「本体が冷えるまで待ってから給油せよ」という指示は、今回あたった7本のどこにも書かれていない。書かれているのは「給油する前に必ず消火する」までだ。余熱で火が着いた事例がある、という事実のほうを覚えて帰ってほしい。
最後は、自分の機種で確かめる
ここまで挙げてきたのは、トヨトミが出している文書の中身だ。テント内でご使用の場合の取扱注意書は、冒頭で製品の取扱説明書もあわせて読むことを求めている。末尾には、製品の取扱説明書とこの注意書き以外の使い方で起きた故障・損傷・事故について、同社は責任を負わない、とも書かれている。
つまり最終的な答えは、お使いの機種の取扱説明書にある。よくある質問も、取扱説明書を確認したうえで使うように案内している。この記事を読んで「自分のストーブはどうなのか」が分からなければ、機種名を手元に用意して、メーカーのお客様相談窓口に聞くのがいちばん早い。チラシにも、不明な点や気付いた点があれば窓口へ問い合わせるように書かれている。
この記事は、メーカーが何をどこに書いているかの地図でしかない。あなたの1台について答えを出せるのは、その1台の説明書とメーカーだけだ。
まとめ
トヨトミは3つの文書を出している。よくある質問は屋外での使用を認めていない。そして「テント内でご使用の場合の取扱注意書」には、使ってよいテントの条件と、数多くの禁止事項が並んでいる。冬キャンプで効くのは、雪上での使用禁止と、積雪するような状況では絶対に使用しないという項目だ。同じ注意書きでは高地も1300m以上で使用禁止、インナーテントもタープ内も禁止、2台以上の併用も禁止とされている。そして給油はテントの外、火の気のない所でおこなう。読むべき文書は1つではなかった——ここが、この記事でいちばん伝えたいことだ。
参考にした情報源
- トヨトミ|よくある質問「屋外で使用できますか?」
- トヨトミ|安心してキャンプを楽しむために
- トヨトミ|テント内でご使用の場合の取扱注意書(PDF)
- トヨトミ|取扱注意書チラシ(PDF)
- NITE|石油ストーブ・石油ファンヒーターの事故、5年間で57人死亡
- NITE|石油ストーブ「カートリッジタンクのふたを締め忘れて漏れた灯油が発火」
- 経済産業省|シーズン初めの石油ストーブ安全大作戦


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