焚き火の焚き付けが足りない。足元を見ると、乾いた小枝が落ちている。「これ、拾って燃やしていいのかな」——キャンプで一度は迷う場面だ。
答えは「どこに落ちているか」で変わる。キャンプ場の中なら、まずそのキャンプ場の決まりを見る。ただし保安林や特別保護地区の決まりは場所に掛かるもので、キャンプ場の案内がその許可の代わりになるわけではない。キャンプ場の外の森なら、森林法が関わってくる。そして保安林や、国立公園の特別保護地区では、落ちた枝を採ることそのものが許可制になっている。この記事では、その線の引き方を条文と林野庁・環境省の資料で確かめる。
目次
結論:拾っていいかは、落ちている場所で決まる
- キャンプ場の中……キャンプ場ごとに決まりがある。落ちている枯れ枝や松ぼっくりの使用を認めているキャンプ場もある。まず受付の案内を読む。ただし、その場所が保安林や特別保護地区なら、下の決まりはキャンプ場の中でも別に掛かる
- キャンプ場の外の森……森林法第197条は、森林の産物を窃取した者を「森林窃盗」として罰すると定めている。林野庁の森林管理局は、国有林で樹木・山菜・きのこ・岩石・土砂などを無断で採取する行為は森林窃盗に問われることもある、と呼びかけている
- 保安林……森林法第34条第2項で、都道府県知事の許可を受けなければ落枝を採取してはならないとされている(例外の号あり)
- 国立公園・国定公園の特別保護地区……自然公園法第21条第3項で、落枝の採取もたき火も、許可を受けなければしてはならない行為に並んでいる(ただし書きと例外の項あり)
いちばん簡単な守り方は、キャンプ場の外では拾わず、焚き付けは持っていくことだ。どれくらい持っていけばいいかはキャンプの薪は何束必要?にまとめてある。
場内の落ち枝:使ってよいかは施設の案内で分かれる
キャンプ場の中で落ちている枝を拾ってよいかは、まずそのキャンプ場の決まりを見る。
たとえば山梨県鳴沢村の富士満願ビレッジファミリーキャンプ場は、利用案内の「禁止事項・注意事項」に、場内の樹木は伐採しないよう求めたうえで、場内に落ちている枯れ枝や松ぼっくりは使ってかまわないと書いている。同じ項目では、子どもが植えてある植物を折らないよう、保護者に監督も頼んでいる。つまり「落ちているものは使ってよい、生えているものには手を出さない」という線だ。
一方、国立公園の中では話が違ってくる。環境省は国立公園の利用上のマナーとして、動植物をとらないこと、石を持ち帰らないこと、そしてキャンプやたき火は決められた場所以外でしないことを挙げている。
もうひとつ押さえておきたいのは、キャンプ場の決まりと法律の決まりは別物だということだ。後で見る森林法第34条第2項(保安林)も自然公園法第21条第3項(特別保護地区)も、許可が要るかどうかを場所で書いていて、キャンプ場の中を除く書き方にはなっていない。許可を出すのは都道府県知事や環境大臣だ。キャンプ場の「使ってよい」は、そのキャンプ場としての決まりで、この許可の代わりではない。
キャンプ場と保安林が重なることもありうる。東北森林管理局は、国有林への入林手続きが要らない場所の例に「野営場」を挙げている。国有林の中にある野営場もある、ということだ。そして四国森林管理局は、国有林の約9割が保安林だと書いている。
ここからは筆者の読み方だ。同じ「キャンプ場の落ち枝」でも、認めているところと、そうでないところがある。富士満願ビレッジのように案内に書いてあれば迷わないが、書いていなければ受付で一言聞くのがいちばん確実だ。聞いて断られたら、それがその場所の答えになる。森の中のキャンプ場で、そこが保安林や国立公園の特別保護地区に当たるかが気になるなら、それも運営者に聞いておくと安心だ。
キャンプ場の外の森:森林法の「森林窃盗」
キャンプ場の外の森にも、持ち主がいる。森林法第2条第3項によると、「国有林」は国が森林所有者である森林など、「民有林」は国有林以外の森林をいう。
森林法第百九十七条によると、森林でその産物を窃取した者は、森林窃盗とされる。ここでいう産物には、人工を加えたものを含む。刑は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金だ。
森林法第百九十八条によると、保安林の区域内で犯した森林窃盗なら、刑は五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金になる。
林野庁の東北森林管理局と四国森林管理局は、国有林への入林の案内で、国有林の中で樹木や、山菜を含む草本類、きのこ類、岩石、土砂といった産物を無断で採ると、森林窃盗に問われることもあると書いている。そのうえで、こうした行為はしないよう呼びかけている。関東森林管理局も同じ趣旨の呼びかけを載せている。
ここからは筆者の読み方だ。林野庁の例示に「落ち枝」という語は出てこない。だから落ちている枝が「産物」に当たるかどうかを、この記事では言い切らない。ただ、林野庁が樹木から山菜、きのこ、石や土まで並べて「無断で採取」をしないよう求めている以上、キャンプ場の外で持ち主の許しなく拾う理由は見当たらない。拾いたいなら、先にその森の持ち主か管理者の許しを得る。それができないなら拾わない。
🔵 小さな注意をひとつ。森林管理局のページでも、四国と関東の局は第197条の刑を「懲役」と書いており、東北の局は「拘禁刑」と書いている。e-Gov法令検索で見られるいまの条文は「拘禁刑」だ。条文を確かめたいときは、e-Govの本文を見るのが確実だ。
保安林:落枝を採ることそのものが許可制
森林窃盗は「窃取」の話だった。保安林はそれとは別に、採る行為そのものに許可が要る。
森林法第三十四条第二項によると、保安林においては、都道府県知事の許可を受けなければ、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、下草、落葉若しくは落枝を採取し、又は土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為をしてはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。一 法令又はこれに基づく処分によりこれらの行為をする義務のある者がその履行としてする場合、二 森林所有者等が第四十九条第一項の許可を受けてする場合、三 第百八十八条第三項の規定に基づいてする場合、四 火災、風水害その他の非常災害に際し緊急の用に供する必要がある場合、五 軽易な行為であつて農林水産省令で定めるものをする場合、六 その他農林水産省令で定める場合。
森林法施行規則第六十三条第一項によると、上の第六号の場合には、自家の生活の用に充てるため、あらかじめ都道府県知事に届け出たところに従つて下草、落葉又は落枝を採取する場合(第三号)と、学術研究の目的に供するため、あらかじめ都道府県知事に届け出たところに従つて下草、落葉又は落枝を採取する場合(第四号)が含まれる。同条第二項によると、この届出は行為をしようとする日の二週間前までに届出書を提出してしなければならず、同条第三項によると、届出書には図面を添えなければならない。
森林法第二百七条によると、第三十四条第二項(第四十四条において準用する場合を含む。)の規定に違反し、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、又は下草、落葉若しくは落枝を採取する行為をした者(第二号)は、百五十万円以下の罰金に処する。
森林法第三十九条によると、保安林の指定があったときは、民有林なら都道府県知事が、国有林なら農林水産大臣が、その保安林の区域内にこれを表示する標識を設置しなければならない。
ここからは筆者の読み方だ。保安林は、キャンプ場の外の森と無関係な場所ではない。四国森林管理局は、国有林の約9割が保安林だと書いている。そして落枝の採取を名指しで認める道として省令が挙げているのは、上の第三号・第四号のように2週間前までに図面つきで届け出る形だ。焚き付けが足りなくなってその場で拾う、という使い方は、この段取りに乗らない。「保安林」の標識を見たら、落ちている枝にも手を出さない。これで覚えておけばいい。
国立公園・国定公園の特別保護地区:落枝もたき火も許可制
自然公園法第21条第1項によると、特別保護地区は、国立公園・国定公園の特別地域の中に、景観を維持するため特に必要があるときに指定される地区だ。
自然公園法第二十一条第三項によると、特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあっては環境大臣の、国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。各号のうち、第六号は「火入れ又はたき火をすること」、第七号は「木竹以外の植物を採取し、若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること」だ。同条第八項は、公園事業の執行として行う行為や、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であって環境省令で定めるものなどについては、第三項と第六項・第七項の規定は適用しないとしている。
自然公園法第八十二条によると、第二十一条第三項の規定に違反したときは、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
同じ国立公園の中でも、特別保護地区を除く特別地域には、自然公園法第二十条第三項に許可の要る行為が並んでいる。その各号には、木竹の伐採や、環境大臣が指定する区域内での木竹の損傷、環境大臣が指定する植物の採取などが入っているが、「落枝の採取」と「たき火」の語は出てこない(第十八号の政令で定める行為は、自然公園法施行令第三条で、環境大臣が指定する道路での車馬の使用とされている)。
ここからは筆者の読み方だ。特別保護地区では、落ちた枝を拾うことも、火を焚くことも、それぞれが許可の要る行為として条文に並んでいる。第八項の例外に当たるかどうかを、キャンプに来た人がその場で判断するのは難しい。だから国立公園の中では、決められた場所以外で拾わない・焚かないと決めておくのがいい。環境省のマナーの呼びかけも、この向きだ。
🔴 そして、特別地域の許可の一覧に「落枝の採取」が無いことは、「拾ってよい」という意味ではない。その土地が国有林や保安林なら、ここまでに書いた森林法の話は別に掛かってくる。
拾いに林へ入ること自体にも注意がある
法律とは別に、枝を探して林の中へ入ること自体にも危険がある。四国森林管理局は入林する人への注意事項として、立ち止まるときは落下する枝や落石の危険が無いかを確かめること、そして枯木や枯れ枝は危険なので近寄らないことを挙げている。関東森林管理局も、入林時は常に倒木や枝の落下、落石などの危険がともなうと書いている。
ここからは筆者の読み方だ。枝がたくさん落ちている場所は、上にも枯れた枝が残っている場所かもしれない。足元ばかり見て拾い歩くのは、頭上への注意がいちばん薄くなる時間でもある。
🔴 もうひとつ。関東森林管理局は、野営場の決められた場所以外でたき火をしないよう求めている。拾った枝で、キャンプ場の外で火を焚くのは論外だ。また四国森林管理局は、令和8年1月1日から、市町村が林野火災注意報・警報を出す場合があり、警報が出ると指定区域内でたき火が禁止される(罰則あり)と案内している。キャンプ場での扱いは焚き火なしのキャンプの過ごし方にまとめた。
焚き付けは「持っていく」が正解
ここまでをまとめると、キャンプ場の外で拾った枝で焚き火をするには、確かめることが多すぎる。持ち主は誰か。保安林ではないか。国立公園の特別保護地区ではないか。どれか1つでも分からなければ、拾わないほうがいい。
だから焚き付けは、最初から持っていく。薪と一緒に細い焚き付け用の薪や、着火剤を用意しておけば、足元の枝に頼らなくて済む。火のつけ方と薪の組み方は焚き火のやり方完全ガイドで扱っている。
法律の条文を確かめながら持ち物を決める、という考え方はキャンプ用ナイフを車に積むのは違反?でも使った。道具も焚き付けも、「その場で何とかする」より「決まりを確かめて持っていく」ほうが、当日の迷いが減る。
よくある質問
キャンプ場で「拾っていい」と言われたら、どんな枝でもいい?
富士満願ビレッジの案内が認めているのは、場内に落ちている枯れ枝や松ぼっくりで、場内の樹木は伐採しないよう求めている。生えている木の枝を折るのは、落ちている枝を拾うのとは別の話だ。許可の範囲は、そのキャンプ場の言い方どおりに受け取っておきたい。
河原の流木なら、誰の物でもない?
この記事で確かめたのは森林法と自然公園法の条文で、河川敷のきまりは扱っていない。河原も誰かが管理している場所なので、拾う前に管理者のルールを確かめてほしい。
保安林かどうかは、どうやって分かる?
森林法第39条は、保安林の区域内に、それを表示する標識を設置するよう定めている。現地で標識を見かけたら、そこは保安林だと考えていい。国有林かどうかは、東北森林管理局が管内図などで調べる方法を案内している。
まとめ
- キャンプ場の中の落ち枝は、まずキャンプ場の決まりを見る。使ってよいと案内しているキャンプ場もある。書いていなければ受付で聞く。ただしキャンプ場の案内は、保安林や特別保護地区の許可の代わりではない
- キャンプ場の外の森では、森林法第197条の森林窃盗(三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金)がある。林野庁は、国有林で樹木・山菜・きのこ・岩石・土砂などを無断で採取しないよう呼びかけている
- 保安林では、森林法第34条第2項により、都道府県知事の許可を受けなければ落枝を採取してはならない(例外の号あり。省令が落枝の採取を名指しするのは、2週間前までに図面つきで届け出る形)。違反は百五十万円以下の罰金
- 国立公園・国定公園の特別保護地区では、自然公園法第21条第3項により、落枝の採取もたき火も許可を受けなければしてはならない(非常災害のただし書きと、第8項の例外あり)。違反は一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金
- 枝を探して林へ入ること自体にも、落下する枝の危険がある。焚き付けは持っていくのがいちばん確実
参考にした情報源
- e-Gov法令検索|森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)
- e-Gov法令検索|森林法施行規則(昭和二十六年農林省令第五十四号)
- e-Gov法令検索|自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)
- e-Gov法令検索|自然公園法施行令(昭和三十二年政令第二百九十八号)
- 林野庁 東北森林管理局|国有林への入林手続
- 林野庁 四国森林管理局|国有林へ入林される皆様へのお願い
- 林野庁 関東森林管理局|国有林への入林
- 環境省|国立公園の利用上のマナー
- 富士満願ビレッジファミリーキャンプ場|禁止事項・注意事項

