キャンプ場に着くと、車は物置になる。入りきらない道具、着替え、財布。夜はテントで寝るので、駐車場は無人になる。ここで知っておきたいのは、「車上ねらい」と「自動車盗」が別の手口として数えられていることだ。この記事は、警視庁と警察庁の資料だけを材料に、その違いと対策を整理したものだ。
結論:2つの手口を分けて考える
- 警視庁の説明では、「車上ねらい」は自動車などの積荷や車内の金品を盗るもの。自動車に限った手口ではなく、駐輪した自転車のカゴから荷物を盗むものも含まれる
- いっぽう「自動車盗」は車そのものが盗られる手口で、警察庁が別に統計を取っている
- ここが要注意。その自動車盗について、警察庁は被害に遭った車の概ね4台に3台が「キーなし」の状態だったとしている。つまり、キーを抜いてあっても盗まれている
- 令和6年の自動車盗の認知件数は6,080件。ピーク時から1割以下にまで減っている
- 警視庁が挙げている車上ねらいの対策は5つ。そのうち2つは「置かない」ことについての項目だ
- 警視庁は「自動車盗」の防犯対策を別のページで出しており、リレーアタックとCANインベーダーという手口ごとの対策も書かれている
「車上ねらい」とは何を指すのか
警視庁の「車上ねらい」の防犯対策には、注記として定義が置かれている。車上ねらいとは、自動車などの積荷や車内の金品を盗むもの。自動車だけに限った手口ではなく、駐輪した自転車などのカゴから荷物を盗むものも含む——という内容だ。
ページには事例も3つ載っている。ドアロックをせずに車を離れ、戻ったら車内のバッグが無くなっていた例。窓を開けたまま駐車し、用事から戻ったら財布が無くなっていた例。そして買い物したバッグを自転車のカゴに入れたまま別の店に入り、戻ったら盗まれていた例だ。
3つとも、短い時間、目を離しているあいだに起きている。キャンプ場の駐車場で言えば、受付に行くあいだ、炊事棟に行くあいだ、そして寝ているあいだが、それに当たる。
警視庁が挙げている対策は5つ
- 車から離れるときは、たとえ短時間でも鍵を必ず抜くこと。そのうえで窓を完全に閉め、ドアロックをする
- 車内や自転車のカゴ等に、貴重品等を置いたままにしない
- 貴重品等を置いたまま、路上に放置駐車・放置駐輪をしない
- 自宅の駐車場なら、防犯カメラやセンサーライトを付ける
- 自宅の外に停めるなら、防犯カメラや照明設備といった備えのある駐車場を選ぶ
5つのうち2つが「貴重品を置いたままにしない」という向きの項目だ。鍵をかけることと、置かないことは、別々に挙げられている。片方だけでは対策の半分になる、と読める。
4つめと5つめは、設備の話になる。キャンプ場の駐車場を自分で選べる場面は限られるが、「照明があるか」「管理棟から見えるか」はサイトを決めるときに見られる。予約の段階で効く情報だ、と考えておきたい。
自動車盗のほうは、別の数字で見る
警察庁が令和7年3月に出した「自動車盗難等の発生状況等について」は、車そのものが盗まれる手口を扱っている。車上ねらいとは別の統計だ。
ここで押さえておきたい特徴が2つ挙げられている。ひとつは、キーなしの割合が高いこと。盗難被害に遭った自動車のうち、概ね4台に3台が「キーなし」の状態で被害に遭っているという。この「キーなし」は、盗難のときにキーを抜いていた、といった状態を指す。
資料には、用語の定義も添えられている。「キーあり」に数えられるのは2通り。エンジンキーが、イグニッションスイッチに挿さったまま被害に遭ったもの。それと、運転席やその周辺に放置されていて被害に遭ったものだ。「キーなし」は、この「キーあり」以外すべてを指す。
つまり読み方はこうなる。「キーを挿しっぱなしだったから盗られた」ではない。その逆で、キーが車内に無かった車のほうが、4台に3台を占めている。鍵を抜いてロックする、という当たり前の対策だけでは足りていない、ということになる。
もうひとつの特徴は、被害が車本体にとどまらないことだ。カーナビやナンバープレートが盗まれる被害も起きている、と書かれている。ナンバープレートについては、警察の捜査を逃れるために別の車両へ取り付け、他の犯罪に使う場合がある、という記述もある。
では、鍵を抜いた車をどう守るのか
ここで手が止まってしまうが、答えは同じ警視庁の「愛車をガード」の中にある。「自動車盗」の防犯対策という、車上ねらいとは別のページだ。基本の対策として挙げられているのは次のものだ。
- 複数の防犯対策を組み合わせる。挙がっているのは、ハンドル固定装置と警報装置、そしてイモビライザー(電子キーを照合できたときだけエンジンが動く装置)だ
- 停める場所で選べることもある。自宅の外なら、防犯カメラや照明設備といった備えのある駐車場を選ぶ
- 自宅の駐車場そのものには、防犯カメラやセンサーライトを付ける
- 車から離れるときは、短時間でも、窓を完全に閉めること。そのうえで必ずキーを抜き、ドアロックをする
盗難防止の装置としては5つが紹介されている。タイヤロックとハンドルロック、警報装置、イモビライザー、そしてGPS機能付位置探査装置だ。「鍵を抜く」の先に、物理的に動かせなくする手と、位置が分かる手が置かれているという組み立てだ。
手口ごとの対策も書かれている
同じページには、手口の名前を挙げた対策が2つ載っている。キーを抜いてあっても盗まれる、という数字の背景にあたる部分だ。
リレーアタック対策は3つ。どれもスマートキーの電波を止める方向の手だ。ひとつは「節電モード」で、これが付いている機種なら設定して、電波の受信待機そのものを停止する。ふたつめは市販の防犯ケース。電波を遮断する目的で売られているものを使う。みっつめは身近な材料で、金属缶へ入れる、あるいはアルミホイルで包む。いずれも密閉して電波を遮る、という考え方になっている。
CANインベーダー対策も3つある。ひとつは停め方で、車両の左側面に、犯人が作業できるスペースを作らないようにすること。もうひとつは物理的な装備で、タイヤロックやハンドル固定装置を取り付ける。そして3つめが、防犯機能の追加などについてディーラー等に相談してみる、という項目だ。
最後の1つは、キャンプ場でそのまま効く。どこに、どの向きで停めるかは、こちらで決められる。壁や植え込みに左側を寄せられる区画があるなら、それは選ぶ理由になる。
件数の推移と、地域のかたより
自動車盗の認知件数は、平成15年がピークだった。令和6年は6,080件で、ピーク時から1割以下にまで減っている、と書かれている。検挙率のほうは、令和6年で44.1パーセントだ。
地域についても記述がある。都道府県別の認知件数では、上位5県——愛知県、埼玉県、千葉県、茨城県、神奈川県——で全体の56.8パーセントを占めている。全国どこでも同じ確率、という形ではない。出かける先がどこかによって、警戒の度合いを変える材料にはなる。
この数字はキャンプ場のものではない
ここははっきりさせておきたい。今回あたった2つの資料は、どちらも一般的な車上ねらい・自動車盗についてのもので、キャンプ場で起きた被害を数えた統計ではない。キャンプ場に限った件数は、この記事では扱えていない。
それでも、手口の型——短時間目を離したすきに車内の物が盗られる、キーを抜いてあっても車ごと持っていかれる——は、場所が変わっても成り立つ。数字をキャンプ場の話に置き換えるのではなく、型のほうを借りる、という読み方をしてほしい。
キャンプ場での置き換え
ここまでに出てきた対策のうち、キャンプ場でそのまま使えるものを並べる。かっこの中は、それがどちらの資料に書かれているかだ。
- 寝る前に、車内から貴重品をテントへ移す。貴重品等を、車内や自転車のカゴ等に置いたまま離れないこと(警視庁・車上ねらい)
- 受付や炊事棟へ行くときも、窓は完全に閉める。キーは必ず抜き、ドアロックする。「短時間でも」という条件が、両ページに共通して書かれている(警視庁・車上ねらい/自動車盗)
- 鍵に加えて、もう一手を用意する。ハンドル固定装置・警報装置・イモビライザーなど、複数の防犯対策を取る(警視庁・自動車盗)
- スマートキーは電波を止めておく。節電モードがあれば設定。無ければ防犯ケース、金属缶、アルミホイルのどれかで密閉する(警視庁・自動車盗)
- 停める向きを選ぶ。車両の左側面に、作業できるスペースを作らない(警視庁・自動車盗)
- サイトを選ぶとき、駐車位置に照明が届くかを見る。自宅以外に停めるなら防犯カメラや照明設備等の備えがある駐車場を、と両ページが書いている(警視庁・車上ねらい/自動車盗)
車への積み方そのものはキャンプ道具の車への積み方に、車で寝るときの話は車中泊キャンプ完全ガイドにまとめてある。この記事は「車を離れているあいだ」を担当する。
まとめ
車上ねらいと自動車盗は、別の手口として数えられている。車上ねらいは車内の金品が対象で、警視庁が挙げている対策は5つ。そのうち2つは「貴重品を置いたままにしない」という向きの項目だった。自動車盗のほうは、被害に遭った車の概ね4台に3台がキーなしの状態だったと警察庁が書いている。鍵を抜けば安心、という形にはなっていない。どちらの資料もキャンプ場の統計ではないが、短時間目を離したすきに起きるという型は共通している。寝る前に、貴重品を車から降ろす。まずはそこからだ。




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