薪の「乾いている」は何%?20%以下の数字には基準が2つあり、水分計は表面しか見ていない

薪の「乾いている」は何%?20%以下の数字には基準が2つあり、水分計は表面しか見ていない

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焚き火で煙ばかり出る、なかなか炎が安定しない。原因が薪の湿り気にあることは知られているが、「乾いている」の線がどこにあるかを数字で言える人は多くない。この記事では、岐阜県森林研究所が実際に薪を積んで測った調査と、三重県林業研究所の含水率の解説をもとに、20%という数字の意味と、水分計の読み方を整理する。

目次

結論:20%以下。ただし基準が2つある

  • 岐阜県森林研究所の記事では、薪ストーブ用の薪について含水率は20%以下が良いとされていると書かれている。伐ったばかりのスギやヒノキは50%以上だという
  • 同研究所がスギ間伐材で試した結果、屋外の桟積みで約2か月後には7割以上の薪が20%以下になった
  • 差が出たのは5か月後だ。軒下ではすべての薪が10%前後まで下がったのに対し、露天では平均は10数%でも、30%近いままの薪が残った
  • まとめとして示されている目安は、スギなら3ヶ月以上、ヒノキだと4ヶ月以上。ただし場所・時期・天候で条件は違う、という断り付きだ
  • ここが要注意。含水率の出し方は1つではない。湿量基準(WB)と乾量基準(DB)があり、同じ「20%」でも指している水の量が違う。上の調査はWB表示だと明記されている

実際に積んで測った結果がある

岐阜県森林研究所の「針葉樹薪の乾燥過程を調べました」は、乾燥期間について一般には半年とか1年とか言われている、という前置きから始まる。それを確かめるために調査をした、という組み立てだ。

方法はこうだ。試験用の薪は、スギの間伐材を長さ35cm前後に玉伐りし、半割または四割にしてつくった。置き場所は2か所。雨が直接かからない軒下と、被いの無い露天だ。どちらも枕木を敷いたうえで、高さ1m程度まで桟積みしている。

結果として、桟積みごとの平均で見ると軒下も露天も同じように下がっていき、約2か月後には7割以上の薪が20%以下になった。ここまでは、屋根の有無で差が付いていない。

差が出たのは「平均」ではなく「ばらつき」だった

ところが同じ調査を5か月経過時まで続けると、様子が変わる。軒下のほうは、薪がすべて10%前後まで下がった。露天のほうは平均で見れば10数%まで下がるのだが、30%近いままの薪も混じっており、含水率のばらつきが大きくなった——と報告されている。

ここは読み流したくない。屋根が効くのは「平均を下げること」ではなく、「はずれを減らすこと」だったということだ。露天に積んだ山から適当に1本つかんだとき、それが30%近い薪である可能性が残る。焚き火で1本だけ燃え方の悪い薪に当たる、というのはこういう構造だと読める。

スギとヒノキ、そして割り方

同記事では、恒温装置で40℃に保ってスギとヒノキを比べた結果も載せている。開始当初の含水率はスギが64%前後、ヒノキが53%前後で、数字はスギのほうが高い。ところが乾く速さはヒノキのほうが早く進んだ、という結果だった。最初の数字の大小と、乾く速さは別の話だ。

割り方についても確かめられている。丸太のまま・半割・四割で比べると、両方の樹種とも、丸材より半割、半割より四割のほうが乾燥が早く進んだ。細く割るのは着火のためだけではない、ということになる。

そして結びの一文が、この調査の答えになっている。針葉樹間伐材の薪を20%以下まで乾かすには、スギなら3ヶ月以上、ヒノキなら4ヶ月以上はかかると思われる——そう書いたうえで、乾燥させる場所や時期、天候によって条件は違う、と断りが添えられている。

同じ「20%」でも、基準が2つある

ここが、水分計を買う前に知っておきたい話だ。岐阜県森林研究所の記事は、含水率の出し方が2種類あることを先に説明している。ウエットベース(WB)と呼ばれる湿量基準と、ドライベース(DB)と呼ばれる乾量基準だ。WBは水を含んだ状態の木材全体の重量を分母にする。DBは水分をまったく含まない状態の重量を分母にする。

そして、木材を建築材などに使う場合はDB、燃料などで使う場合はWBを用いることが多いようだ、と書かれたうえで、この調査の含水率はWB表示だと明記されている。薪の20%はWBの20%だ、ということになる。

一方、三重県林業研究所の「木材の含水率は乾量基準です!」は、木材の含水率が乾量基準で求められる理由を説明している。乾量基準では、含水率50%なら木質の半分の重さの水を含み、100%なら木質と同じ重さ、200%なら木質の2倍の重さの水を含む状態になる。湿量基準なら100%を超えることはないが、乾量基準は超える。数字が3桁になっていたら、それは乾量基準だ。

水分計が見ているのは、表面から数cmまで

三重県林業研究所の記事には、携帯型の高周波木材水分計についての注意も書かれている。この機械は電極を材面に押し当て、電極間に流れる電気容量が水分量に応じて変わることを利用している。ただし材面から数cm程度の深さまでしか計測できない。

そして、木材は外気に触れる表層部から乾くため、表層の含水率が低くても中心部は高いままということがよくある、と続く。割った薪の平らな面に当てて「20%を切っているから大丈夫」と判断したとき、その数字は中心まで含んでいない可能性がある、ということだ。

もうひとつ、計測値は木材の比重に大きく影響されるという注意もある。水分計の値と実測値の差が大きい場合は、比重補正値を使う必要があるとされている。数字が出るからといって、その数字がそのまま真の値ではない。

関連して、木材の物性が変わる点として繊維飽和点という値も紹介されている。細胞の空隙の自由水が抜けきり、細胞壁の結合水だけになった状態で、そのときの含水率は乾量基準で約30%だという。また、大気中に置いたときに落ち着く平衡含水率は、全国平均で約15%と言われている、とも書かれている。

乾いたあと、戻ることもある

もうひとつ、置きっぱなしについて気になる報告がある。福井県総合グリーンセンターの「福井の森の研究から」は、葉枯らし乾燥の追跡調査を載せている。夏に伐った試験材の辺材部は2ヶ月後にいちばん低くなったが、秋から冬へ季節が変わり、気温が下がって天候不順が続くと、いったん下がった含水率がじわじわ戻り、長く放置したものでは100%以上まで戻ったものもあった、という内容だ。

ただしこれは丸太の葉枯らし乾燥についての調査であって、割った薪の試験ではない。そのまま薪に当てはめて語ることはしない。それでも「一度乾けばずっと乾いたまま」ではない場面があることは、頭に置いておいて損はない。

買う側・使う側にできること(一般論として)

ここから先は出典に書かれていることではなく、上の資料を踏まえた一般的な段取りとして書く。

  • 売店の薪を疑うのではなく、当たりはずれがある前提で持っていく。露天で保管された山なら、ばらつきが出ているかもしれない
  • 水分計を使うなら、割り面ではなく割った断面の中心寄りを測る。表面から数cmしか見ていないという前提で読む
  • 数字が3桁なら乾量基準。薪の20%という目安はWBの話なので、表示の基準をそろえてから比べる
  • 現地で調達した薪が湿っていたら、細く割る。丸材より半割、半割より四割のほうが早く乾く、という結果が出ている
  • 持ち帰った薪は、屋根のある場所へ。平均ではなく、はずれを減らすために効く

必要な本数の考え方はキャンプの薪は何束必要?に、火の起こし方そのものは焚き火のやり方完全ガイドにまとめてある。この記事は「その薪が燃えるコンディションかどうか」を担当する。

まとめ

薪の目安は含水率20%以下。伐ったばかりのスギ・ヒノキは50%以上ある。岐阜県森林研究所が実際に積んで測ったところ、約2か月で7割以上が20%以下になり、5か月後には軒下がすべて10%前後、露天は平均10数%でも30%近い薪が残った。屋根が効くのはばらつきのほうだ。樹種と割り方でも差が出て、結論はスギで3ヶ月以上、ヒノキで4ヶ月以上。そして20%という数字には湿量基準と乾量基準があり、三重県林業研究所によれば水分計が見ているのは表面から数cmまでだ。数字を持つと、薪の見え方が変わる。

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2018年11月1日

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