焚き火用のグローブを探すと、商品ページに500℃、400℃、EN407……と数字が並んでいる。けれど、この数字は同じものを測っているとは限らない。何秒もつ数字なのか、手袋全体の数字なのか生地だけの数字なのかで、意味がまるで変わる。
この記事では、メーカーの製品ページと、手袋の試験を行う機関の解説で確かめられたことを材料に、①耐熱の数字の読み方 ②EN407という表示の見方 ③サイズの測り方 を整理する。焚き火そのものの手順や道具の一覧は焚き火のやり方完全ガイドにまとめてあるので、ここではグローブを選ぶ話に絞るぞ。
目次
先に結論|数字は秒数と対象をセットで読む
- 耐熱の数字は、秒数と対象をセットで見る。DODのアラミド手袋は、仕様欄に外生地500℃(15秒以内)と書いている(DOD公式)。日光物産の耐熱革手袋に載っている400℃は、中に入っている生地だけの値だと、メーカー自身が断っている(日光物産)。
- 耐熱の数字より低い温度でも、長く触れていれば熱は中まで来る。DODは自社の手袋を断熱素材ではないと明記し、表示の温度より低い物でも、触れ続ければ熱が手の側まで届いてやけどをする、と注意している。
- サイズは手のひらのまわり(手囲い)で決める。グリップスワニーは、手袋のサイズは手囲いで決まり、手の長さは目安だと説明している(グリップスワニー)。
焚き火のまわりで起きていること|東京都の調査から
東京都は、キャンプかバーベキューの経験がある20歳以上の3,000人に、令和6年12月にアンケートを行い、けがやヒヤリ・ハットの経験を合計1,202件集めた(東京都 報道発表 2025年9月10日)。場面を4つに分けたうち、焚き火の場面は262件。何をしていたときかとして、火起こし・火力調整中、トングや火ばさみの使用中、薪割り中、着火剤の使用時が挙がり、どうなったかとして、やけど(しそうになった)、衣類が燃えた、けが(しそうになった)が挙がっている。焚き火とは別に分けられた調理・食べる場面(442件)でも、何をしていたときとして火起こし・火力調整中が、どうなったかとしてやけど(しそうになった)と衣類が燃えたが挙がっている。
同じ発表には、炭を補充していたら4歳の子どもがまねをして、手袋を付けずに素手で火の近くに炭を入れ、やけどしそうになった、という事例も載っている。
都がまとめた事故防止のポイントのうち、火を使うときの項目は3つある。風の強い日は火を控えるか風よけを立て、まわりには燃えやすい物を置かない。着る物は燃えにくい素材にして、着火剤は十分注意して扱う。万一に備えて水などの消火の用意をそばに置き、使い終わった火は完全に消す。手袋については、火を使うときの3項目とは別の、テントなどの設営作業のときの項目に「軍手や耐火手袋を着用しましょう。」と書かれている。服の選び方は焚き火の服装の記事で詳しく扱っている。
耐熱の数字を見るときの3つの確認点
① 何秒もつ数字か
DODの「アツイノイケルシランケド」は、外生地にアラミド、内生地にコットンを使った手袋だ。仕様欄の耐熱温度は、外生地が500℃(15秒以内)、指先と手のひらのシリコングリップが200℃(DOD公式)。機能の説明でも、500℃に最大15秒耐えられる、という書き方をしている。
つまりこの500℃は、500℃の物をいつまでも持っていられるという意味ではなく、秒数の上限が付いた数字だ。同じページは、200℃以上の物をつかむときは手袋を逆向きにはめて、シリコンに熱を当てないように、とも注意している。部位によって耐熱の数字が違うということだ。
なお、このページには、500℃・15秒をどの試験方法で測ったかは書かれていない。後で説明するEN407の数字と、同じ物差しかどうかは、ページからは判断できない。
② 手袋全体の数字か、生地だけの数字か
日光物産の耐熱革手袋(CF85013)は、表地とカフスが牛床革、裏地が綿100%のメリヤス、手のひらの内側に耐熱性の高いコーネックスフェルト、縫い糸にアラミド糸という作りだ(日光物産)。
ページには、コーネックスの特長として400℃までの耐熱性が挙がっている。ただしその直後に、これはコーネックスの生地だけの場合の値で、「手袋の耐熱温度を表すものではありません」と書かれている。
商品ページで大きな数字を見たら、それが中に使っている素材の数字なのか、手袋として測った数字なのかを、注記まで読んで確かめたい。同じページには、耐熱性・断熱性に特化した商品ではあるが完全な安全を保証するものではなく、熱いと感じたら直ちに使用をやめるように、という注意もある。
③ そもそも数字が書いてあるか
革のグローブでは、製品ページに温度の数字が載っていないものもある。スノーピークの「ファイヤーサイドグローブ」の製品ページは、素材をアウターがスエード革(ケブラー糸使用)、インナーがポリエステル・コットン(表地に難燃繊維使用)、サイズを全長340mmとしていて、スペック欄に温度の数字は無い(スノーピーク公式ストア)。インナーは着脱式だ。
グリップスワニーとファイヤーサイドの「G-1 GLOVE」も、販売ページの材質は牛革100%で、耐熱温度の記載は無い。牛革とケブラー糸で作った頑丈な作りだと説明している(ファイヤーサイド公式オンラインストア)。
この場合、数字で比べる材料がそのページには無いということになる。比べたいなら、メーカーに問い合わせるか、数字と条件が書かれている製品同士で比べることになる。
EN407の表示の読み方
EN407は、熱や火から手を守る手袋のヨーロッパ規格だ。靴や保護具の試験を手がけるSATRAの解説によると、2020年版が2004年版に置き換わっていて、業務用だけでなく一般消費者向け・家庭用の手袋も対象に含む。消防士用と溶接用の手袋は、それぞれ別の規格があるので対象外だ(SATRAによるEN 407:2020の解説)。
6つの試験と、数字の並び順
手袋メーカーのメカニクスウェアは、EN407を独立した6つの試験の組み合わせとして説明し、表示の6桁を次の順に並べている(Mechanix Wear「EN 407 Thermal Risks」)。各桁は0〜4の性能レベルだ。
| 桁 | 試験 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 1桁目 | 燃焼挙動 | 炎を当てたあと、どれだけ早く火が消えるか |
| 2桁目 | 接触熱 | 熱い物に触れたとき、内側がどれだけもつか |
| 3桁目 | 対流熱 | 炎の熱気にさらしたとき、内側の温度の上がり方 |
| 4桁目 | 放射熱 | 離れた熱源からの熱で、内側の温度の上がり方 |
| 5桁目 | 少量の溶けた金属 | 溶けた金属のしずくに、何滴までもつか |
| 6桁目 | 大量の溶けた金属 | 溶けた金属を浴びせたときの損傷 |
SATRAの解説(SATRA)では、メーカーが性能をうたわない項目は、数字の代わりにXと表示される。2020年版からは絵表示が2種類になり、炎の燃え広がりにくさを性能としてうたう手袋は炎のマーク、うたわない手袋は熱い物に触れるマークを使う(こちらは、ほかの項目の少なくとも1つをレベル2までで名乗ることが条件)。1つの製品に両方を付けることは認められていない。
接触熱のレベルは、その温度で15秒以上もつかどうか
焚き火グローブを選ぶときに気になるのは、2桁目の接触熱だろう。SATRAの解説(SATRA)によると、試験では金属の円筒を決まった温度に熱して手袋の外側に当て、手が触れる側に置いた測定器の温度が、はじめより10℃上がるまでの時間を測る。手のひら部分はどの手袋でも試験し、表地・裏地・中間層をすべて重ねた状態で測る(部分的な補強は除く)。
| 接触熱のレベル | 円筒の温度(℃) | 内側が10℃上がるまでの時間 |
|---|---|---|
| 1 | 100 | 15秒以上 |
| 2 | 250 | 15秒以上 |
| 3 | 350 | 15秒以上 |
| 4 | 500 | 15秒以上 |
あわせて、いちばん内側の層に溶けや穴が無いことも確認される。15秒以上という条件は、メカニクスウェアの説明でも同じだ(Mechanix Wear)。
レベル3・4には、燃え広がりの条件が付く
SATRAの解説では、熱に関するどの項目でもレベル3か4を名乗るには、炎の燃え広がりの試験も受けて、レベル3以上を取らなければならない。届かなければ、名乗れる上限はレベル2になる(SATRA)。メカニクスウェアも、接触熱について同じ条件を書いている。
この燃え広がりの試験では、手袋の中指の先に炎を10秒当て、炎を離したあとに燃え続ける時間と赤く残る時間を見る。SATRAの説明では、この試験で求められるのは、燃焼を抑えることと、着けている人が気づいて安全に外せるくらいゆっくり燃えることで、素材そのものが燃えない必要はない。燃え広がりにくいことと、燃えないことは別ということだ。
同じ温度でも、つかみ方で熱の入り方は変わる
SATRAの解説(SATRA)では、触れた物から伝わる熱の量に関わる要因として、触れる面積、物の温度、手袋と物の熱の伝えやすさと熱をためる量、押し付ける強さが挙がっている。
試験の温度と秒数は決まった条件で手袋同士を比べる物差しで、熱いダッチオーブンの取っ手を強く握り続けるような焚き火のそばの使い方まで、そのまま表しているとは限らない。
焚き火の温度と、手袋の数字を並べてみる
DODの製品ページの注記は、自社グローブの耐熱温度を500℃(15秒以内)としたうえで、「断熱素材ではありません」とはっきり書いている(DOD公式)。表示の温度に届かない物でも、触れている時間が長ければ熱は手の側まで届き、やけどをする。だから性能に頼りすぎないように、というのが同社の注意だ。同じ注記は焚き火の炎の温度にも触れていて、燃え始めでおよそ250℃、落ち着いた炎では800〜1000℃に達すると言われている、と紹介している。
メーカー自身が挙げた数字だけを並べても、安定した炎の温度は手袋の耐熱温度を上回る。耐熱グローブは、炎の中に手を入れるための道具ではないと考えておきたい。熱に耐えることと熱を通さないことが別だという話は、焚き火シートの耐熱と断熱の記事でも同じ構図になっている。
メーカーが書いている、使うときの注意
DODの製品ページの注意事項から、使い方に関わるものを拾うと次のとおり(デザイン変更や写真の色味についての注記は省いた)(DOD公式)。
- 濡れていない、よく乾いた状態で使う
- 200℃以上の物をつかむときは、手袋を逆向きにはめてシリコンに熱を当てない(シリコンが焼けるおそれがある)
- アラミド繊維は切れにくいが、切れないわけではない。刃物を使うときは十分に注意する
- 200℃前後で、生地の染料の一部が焼けて色が変わることがある。ただし耐熱性能には影響しない、としている
日光物産は前述のとおり、熱いと感じたら直ちに使用をやめるよう書いている(日光物産)。注意事項は製品ごとに違うので、手元のグローブは、その製品の説明書やページを一度読んでおこう。
サイズの測り方|手の長さより「手囲い」
グリップスワニーのサイズガイドは、手袋のサイズは手囲い(周囲)の長さで決まり、手の長さ(手長)は人によって手囲いとの釣り合いが違うので目安にとどめる、と説明している(グリップスワニー「グローブのサイズの測り方」)。
同社が周囲と呼んでいるのは、次の2点を通って手のまわりを一周した長さだ。
- 左手の生命線の始点
- 小指の付け根のシワと手首の付け根のシワを結んだ線上で、手首側から1/3の距離にある点
G-1 GLOVEは、ファイヤーサイドの販売ページでS/23cm、M/24cm、L/25cm、XL/26cmの4サイズと書かれている(ファイヤーサイド公式オンラインストア)。このページ自体には、cmが何の長さかの説明は無いので、測った手囲いと照らし合わせる前に、グリップスワニーのサイズガイドもあわせて確認しておきたい。
一方、サイズを1つにしているグローブもある。DODのアツイノイケルシランケドはフリーサイズで、長い袖口で手首の上まで守る作り(DOD公式)。日光物産のCF85013はサイズの表示がフリー(35cm)(日光物産)、スノーピークのファイヤーサイドグローブはサイズの表示が全長340mm(スノーピーク公式ストア)。
よくある質問
Q. 軍手じゃだめなの?
東京都の事故防止のポイントでは、テントなどの設営作業のときの項目で「軍手や耐火手袋を着用しましょう。」としている(東京都)。軍手は素材も厚みも製品ごとに違い、耐熱の数字が書かれていないものは、この記事の物差しでは比べられない。熱い物に触れる可能性があるなら、数字と条件が書かれたグローブを選ぶと比べやすい。
Q. 燃えている薪をグローブでつかんでいい?
DODが挙げている安定した炎の温度(800〜1000℃と言われている)は、自社グローブの耐熱温度(500℃・15秒以内)を上回っている。同社は、この手袋は熱を遮る素材ではなく、長く触れていればやけどをするので、性能に頼りすぎないよう呼びかけている(DOD公式)。薪の位置を直すのは火ばさみに任せて、グローブは熱い物に触れてしまったときの守りと考えるほうが、メーカーの注意書きと食い違わない。
Q. 洗濯できる?
DODのアツイノイケルシランケドは、洗濯機で洗えると製品ページに書かれている(DOD公式)。一方で同じページは、よく乾いた状態で使うように注意している。革のグローブの手入れは製品ごとに違うので、それぞれのメーカーの説明を確認してほしい。
まとめ
- 耐熱の数字は、何秒もつか(例:500℃・15秒以内)と、手袋全体か生地だけか(例:400℃は生地のみ)を、注記まで読んで確かめる
- EN407の2桁目(接触熱)は、100〜500℃の4段階に熱した円筒を当て、内側が10℃上がるまで15秒以上もつかを見ている。レベル3・4には燃え広がりの条件が付く
- 耐熱の数字より低い温度でも、長く触れれば熱は伝わる。DODは性能を過信しないよう書いている
- サイズは手囲いで測る。サイズを1つにしている製品は、ページのサイズ表示をそのまま確かめる
数字の意味が分かれば、商品ページの比べ方が変わる。焚き火の季節に入る前に、手元のグローブのページも一度読み直してみてくれ。
参考にした情報源
- 東京都 生活文化局「キャンプ・BBQでのヒヤリ・ハット 事故防止ガイドを作成」(2025年9月10日)
- SATRA Technology Centre:EN 407:2020の解説記事(英語)
- Mechanix Wear「EN 407 Thermal Risks」
- DOD公式「アツイノイケルシランケド(タン) GL1-778-TN」
- 日光物産「耐熱革手袋 CF85013」
- スノーピーク公式ストア「ファイヤーサイドグローブ ブラウン」
- ファイヤーサイド公式オンラインストア「G-1 GLOVE グローブ」
- グリップスワニー「グローブのサイズの測り方」


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